いろいろあり、前の投稿から半年以上経ってしまいましたが・・・。我が家の住宅建設時のお話の続きです。この記事からは、もう実際に建てた家に住んでいる状態なので完成後の視点も含め記載していきます。
これまでの経過はこちら・・・。
住宅業者は決まったものの・・・
前回のお話で、地場工務店2社の概算での相見積もりの結果、安かった方の工務店を選ぶこととしました。ここから細部を詰めた最終間取りや見積もりを作ることになるのですが、この作業が想像以上に長かったのです・・・。
間取りは思ったよりもモメなかった。
我が家の場合、お願いする工務店が規格住宅として販売している間取りを多少いじる形にしているので、それほど時間はかかりませんでした。完全にイチから設計となるとかなり大変だったとは思うのですが、逆に規格住宅ベースとすることで踏ん切りがついた面もあります。(規格住宅ベースとすることで安くして頂いた)
建ててからの後悔は、やはり多少ありました(リビングを少し広げればよかった、窓を増やせばよかった)が、納得できるレベルで済んでいます。ただ、強いて言えば、壁上部に取り付ける換気用のような窓があれば良かったな・・・とは思っています。
規格住宅の間取りから変更した点
仕様を決めるのが沼だった・・・
最終見積作成に当たり、一番大変だったのがここの部分。妻と住宅建設に当たり話していたのが、”維持費の掛からない家にする”ということ。
そのため、暖房費に直結する断熱や換気仕様はしっかりと確認していきました。
一つの記事にまとめるにはあまりに長くなりそうなので、何回かに分けて書いていきたいと思います。まず今回は、断熱仕様(気密)について。
断熱とは・・・
断熱について、簡単に解説しておこうと思います。
断熱とは、その字の通り熱を断つこと。住宅内の温度が外に漏れないよう様々な断熱材を用いることで対応します。
諸外国に比べ住宅の断熱基準がかなり甘かった日本ですが、近年ようやく断熱性能にもスポットライトが当たり始めています。
断熱性能を表す数値としては、Q値とUa値があります。今現在ではUa値というものが一般的に使われています。(U値は熱滞留率。AはAverageの頭文字で、家全体の平均U値という考え方です)
Q、U、A・・・。
Qはクロウサギ
Uはウサギ
Aはアカウサギ
・・・。
このUa値の基準は各地域で定められています。国の省エネ基準では、北海道の大半の地域は0.46Wとされていますが、この数値はあまり褒められたものではなく、最低でもZEH基準とされる0.40W以下は満たした方が良いかと思います。
近年注目されている、札幌市次世代住宅の断熱性能基準では、0.18W以下をトップランナー、0.22W以下をハイレベル、0.28W以下をスタンダード、0.36W以下をベーシック、0.46W以下をミニマムと設定されています。(ちなみに、札幌市ではトップランナーの場合は160万円、ハイレベルの場合は110万円、スタンダードの場合は50万の補助金があります)
・省エネ基準は最低限度の基準
・北海道で家を建てる場合、札幌市次世代基準のスタンダード以上がオススメ(0.28W/㎡)
このうち、0.18W以下のトップランナーですが、このレベルは全世界的に見てもかなり高レベル。札幌市のパンフレットによれば、既存の一般的な住宅の暖房に係る年間灯油使用量は約2,000Lとされているのに対し、トップランナーレベル住宅が暖房に使用する年間灯油使用量は180Lとされています。1/10以下の数値であり、100円/Lと灯油料金を仮定すると年間18万以上燃料費が浮くことになります。
ちなみに、この数字。高効率石油給湯器であれば暖房・給油含め、年に一回の490Lタンクへの給油で済むことになります。(実際にはカツカツになってしまうので、年2回給油でしょうが・・・)
北海道で年一回の灯油給油で済むのは信じられない・・・
ただ、このトップランナーの断熱性能を実現するためにはかなりの費用を要します。(札幌市サイトで確認したところ、窓は最低でもトリプル、玄関ドアは各社のフラッグシップモデル、外断熱にフェノールフォーム(旭化成のネオマフォームなど)を160mm以上など・・・)。そして、高断熱住宅の施工に慣れている腕のいい工務店を探す必要も出てきます。
一方、ハイレベル、スタンダードレベルは比較的普及価格帯の断熱材や部材を積み上げることで実現可能です。
断熱材かじるの大好き・・・!
私たちが居そうな場所には置かないでね
それほど予算の無かった我が家は、札幌市の基準で言うスタンダードレベル(0.28W)を最低目標として可能な範囲で断熱性能を積み上げていくことにしました。
ちなみに、国が定めている省エネ、ZEH基準のUa値の基準の他にHEAT20基準というものもあります。住宅建設に当たり、断熱性能が気になる方はHEAT20基準についても調べてみてよいかも知れません。
断熱構造・気密構造
断熱構造については、前述の通り。C値も重要であることは理解していたのですが、測定費用が発生することと工務店の技術を信じて測定を行うことはしない方針としました。
なお、この工務店の企画住宅の標準スペックでのUa値は0.3~0.33程度(玄関ドアに窓を付けるか、窓のサイズ等で変動)。そして、こちらからの要望等の結果、最終的には0.22以下(札幌市次世代住宅基準 ハイレベル相当)となりました。下記の見積もり要望のところには標準スペックも入れておきますので、これだけすればuA値が0.1程度変わると参考にして頂ければと思います。
窓・扉
住宅の断熱を考えるうえで非常に重要なものと言えるのが、開口部の断熱性能。開口部とは、窓と扉のことを指します。
お願いした工務店は、トリプル樹脂サッシが標準仕様だったので、窓は追加料金なしでトリプルサッシ。
玄関扉は北海道では一般的なK2グレードと呼ばれるものが標準で、K2グレードのまま見積もり作成することとしました。(我が家の玄関エリアは廊下とドアで区切られており、外出時以外はほぼ出入りしないため)
但し、K2グレードの扉でも採光用窓がついていると断熱性能が低下するため、敢えて採光窓がついていないものを選択。(この玄関扉については最後まで上位グレードのグランデル2やYKKAPのイノベストD50/D70と迷いましたが、差額を風除室設置に回すこととしました)
建てた後の感想としては、開口部のアイテム選定はほぼ間違いなかったかなと思っていますが、家全体の断熱スペックに対し、やはり玄関ドアのみ断熱性が劣るため玄関がひんやりする印象は否めません。
基礎断熱
住宅の基礎は、通風させているものが全国的に見れば一般的ではあるのですが、近年寒冷地では土間をすべてコンクリートで覆った上で立ち上がりコンクリートの周囲を断熱材で覆う”基礎断熱”と呼ばれる工法が増えています。
この工法のメリットは、床下水道管などの凍結リスクが低下することと床下が一定程度の温度で保たれる為、床下断熱材が必要ない(薄くても対応できる)等の点が挙げられます。
この立ち上がり基礎部分を覆う断熱材も厚みが指定できたため、我が家では下記のスペックを指定しました。また、土間下(土間コンクリートの下)にも断熱材設置を新規で依頼しています。
躯体断熱
住宅の壁面部分の断熱スペックとなります。開口部に次いで住宅の断熱性能において重要と思われる部分です。
内断熱部分は、在来工法の場合木材の厚みの関係等から、自動的に100mm程度しか充填できません(太い構造材を使ったり、2×6工法だったりするともっと充填できる)が、使用する断熱材はブローイングウールかグラスウールを選択することとなります。グラスウールの場合、建設後時間が経つと偏り等が生じやすいとされていたのでブローイングウールを希望。
外断熱部分は、断熱性能最優先としたい場合は旭化成のネオマフォームが最強の断熱材となりますが、価格がかなりお高めだったため、安価な断熱材であるEPSを厚め(75mm)に設定しています。
小屋断熱(小屋裏?)については、2Fの上部、天井の部分の断熱となります。工務店側から、この部分はあまり注目されないが、実際の断熱性からするとかなり効果が高いとの話もあり、標準仕様のEPS20mm+ブローイングウール300mmからそれぞれ厚みを上げています。
床下断熱は、本来基礎断熱の場合必要ないとされていますが、我が家は床暖房なしでも冬場裸足で快適に過ごせる家を目指していた為追加しています。
断熱性能のグレードアップは思ったより費用は掛からないので、寒冷地の場合は積極的に検討を!
標準仕様からの変更(断熱部分のみ)にかかった費用は・・・
我が家が工務店側に求めた断熱に関する項目について今回は触れてみました。実は、これだけ仕様を上げても追加でかかった金額は70~80万程度。この金額をどう見るかは地域や人それぞれの価値観にもよると思いますが、私個人としては思ったよりかからないなという印象でした。
100万は軽く超えると思っていたもんね~
今回の仕様で建てた家のuA値は・・・
今回私が建てた家の最終的なuA値は0.22となりました。
このレベルのスペックは本州の山間部を除くほとんどの地域ではほぼ必要ない(0.3~0.4程度で十分)と思いますが、北海道の道南地域以外や、北東北、長野県等の山間部にお住いの方の場合は冬場の快適性がかなり変わってきます。(但し、uA値0.3程度の住宅と比べれば、光熱費で追加金額の元が取れるまでにはかなりの時間を要します)。
高断熱仕様の住居で過ごしてみて感じたメリット
灯油消費量(暖房費用)
私が引っ越す前まで住んでいた築約30年のアパートでは、暖房をつけるエリアに限って言えば建設した住宅の3割程度。それでも、灯油消費量は厳冬期に一か月約200Lに達していました。一方、建設した家ではより寒い地域になり、住面積も増えた(ほぼ全館暖房)にも関わらず厳冬期の一か月灯油消費量(日割から推定)は約100L~120L程度で済んでいます。12月に490Lの灯油タンクを満タンにすれば、雪解け時期の4月まで持つ計算です。(実際、入居した1月上旬に9割程度給油したところ、4月中旬時点で4割程度残っていました)
※なお、現住居での上記数字は給湯費用(毎日風呂を沸かす)を含み、平日昼間家に人が滞在している状態での数値。室温は日中室温23~24℃を目安に暖房、就寝時(23時は18~19℃を下限に暖房しています。旧住居では就寝時には暖房をカットしていた数値となります。
灯油は年に2回の給油で済みます!
床暖房なしでも床が全く冷たくない
基礎断熱と床下断熱を組み合わせているため、床暖房がなくても床が全く冷えません。裸足で冬でも快適に過ごすことができます。
ちなみに、床暖房を全区域に設置しようとすると150万~200万程度かかると言われましたが、今回の断熱向上にかかった費用は70~80万。床暖特有の足だけが熱くなるのが苦手だった私たち夫婦には断熱向上しか選択肢はありませんでした。
朝の起床時
前のアパートでは就寝前に暖房を切って寝ると朝には室温が10℃前後・・・なんてこともしばしばでしたが、新居では仮に就寝前に暖房を切って、翌朝の最低気温が-20℃近くまで下がった場合でも18℃以上はほぼ確保できています。
この気温は玄関を除く住居内ほぼすべての空間でこの温度が確保されているので、朝布団から出るのが非常に楽になりました。
真冬でも日差しがあれば暖房不要
最低気温が-20℃、最高気温が-5℃程度の環境下でも晴れている状態で日射があれば、日中6時間程度は暖房をカットしても室内は20℃程度を維持できます。
セントラルヒーティングの必要がない
現状、北海道で一般的な住宅を建てると暖房設備としてセントラルヒーティングが導入されることが多いです。セントラルヒーティングとは、給湯器横等に暖房用のボイラーを設置して、各部屋・区域の放熱板に向けて温水を回すというシステム。冬季、外気温が-20℃近くまで下がることもある北海道では全館暖房が一か所の熱源でできる、このシステムとの相性が良かったのです。
一方、今回建てた家では、リビングにFF式灯油ストーブを1台置くだけ。リビング階段としているため、2階まで暖気が届き、二階の各部屋も下の階(床下)からも温められるため、玄関以外のすべてのエリアでほとんど寒さを感じることはありません。これも、断熱性を高めたから出来たことと言えます。
セントラルヒーティング設置には大体50万~70万程度費用が掛かるとされていますが、今回の家ではネットでFFストーブ(コロナ・アグレシオ)を手配して取り付けてもらっただけなので、総額13万程度。かなり費用を抑えることができました。
そして、セントラルヒーティングでは各部屋に放熱板を設置する必要がありますが、1台のFFストーブのみで賄う場合はそのスペースも必要なくなります。
高断熱仕様のデメリット
高断熱仕様のデメリットは、夏場に熱がこもってしまうということ。高断熱なので、単純に考えると外が暑くてもそれほど内部への影響はないのです。が、南側の窓から入り込む日射で家の中がかなり温められてしまいます。そのため、酷暑が予想される日にはカーテンを閉める、二階の窓を積極的に開けて熱を逃がすなどの対応が必要になってきます。(換気システムだけでは対応は難しい)
ただ、構造体の断熱性能が高いので、冷房の効きは非常に良く消費電力もあまりかかりません。
断熱向上はオススメ!
メリットが多く、デメリットがあまり見当たらない断熱向上。しかも、住宅建設時であれば、床暖房やセントラルヒーティングを設置する費用に比べればはるかに安価に取り組むことができます。
次回は、基礎、建物の躯体、外壁や屋根の工務店への要望仕様について書いてみたいと思います。